2007年11月14日

異界の空を見上げて

誰の心にも異界は存在する。
人それぞれの心の奥底には、人それぞれの異界がある。
それはもしかしたら幻、
と呼ばれる類のものなのかもしれないし、
心のちょっとした屈折が織りなす、
錯覚の一種、なのかもしれない。

作家「恒川光太郎」は彼のまだ数少ない作品群の中で、
一貫して人の心に巣くう、
「異界」という名の世界を描き続けている。

恒川さん、期待の新作「秋の牢獄」を読んだ。
三編の短編で構成された作品群は
これまでと同様、異界という世界を描いた作品集だった。

「秋の牢獄」からは、これまで以上に
一編の稿数が少ない為か、とても淡泊な印象を受けた。
それでもそこに描かれる
圧倒的な「恒川ワールド」は健在だった。
まるで読む者までもが異界に置き去りにされ、
所在なく空を見上げてしまうような感覚だった。

人の心は移ろい揺らぎながら、ただただ何処かに流されていく。
しかし、人はその流されていく軌跡を知ることも、
見ることも、感じることも出来ない。
多分、意識することすら叶わないのだと思う。

恒川さんの作品群は、実はそんな心の彷徨を描き出す。
軌跡という轍の残り香を描き出す。
だから彼の作品は、切なさや悲しさ以上に、どこか淋しい。
そして、その淋しさという感性が、
彼の作品を彩る異界いう世界の輪郭を、明瞭にさせている。

期待が大きすぎたせいか、それとも客観的に読んでも
やはりそう感じていたのかは定かでないが、
短編集「秋の監獄」の恒川光太郎は、
少しばかり自分に貼られた「異界作家」という名のレッテルを、
意識過ぎた嫌いがある。
特に最後に収められた一編から、
私は強くそんなことを感じてしまった

もっと自由に、もっと恒川光太郎らしく、
レッテルを打ち破るのではなく、
レッテルを貼った者達が皆、平伏すような、
私は次作に、そんな幻想的で力強い長編小説を期待します!!

秋の牢獄


yori1199 at 22:46 │Comments(20)TrackBack(10)この記事をクリップ!恒川光太郎 

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この記事へのコメント

1. Posted by たまねぎ    2007年11月15日 00:39
おおっ、もう読んだんですね。恒川さんにはどうしても期待したくなってしまいますよね。私も新作をかなり楽しみで順番待ちしてます。
でもyoriさんと同じく、恒川さんにはあんまりあせらず、ここらで腰を据えて長編一本いってほしいなあとも思ってます。
2. Posted by エビノート    2007年11月15日 21:05
秋という季節にピッタリの作品集でしたね。
何となく物悲しさが漂うそんな季節に、異界に囚われた人の想いに浸ってみたくなるそんな一冊でした。
恒川さんは、『夜市』以来、秋に新刊発売で定着している感がありますね。
次はまた一年後でしょうか?
次回作も楽しみに待ちたいと思います。
3. Posted by yori    2007年11月15日 22:02
たまねぎさん こんばんは
決して悪くはなかったですよ 笑 ただ、たまねぎさん仰るように、腰をすえた長編、やっぱり期待してしまいますね!!
4. Posted by yori    2007年11月15日 22:10
エビノートさん こんばんは
ああ、そうなのですか、三冊とも上梓が秋だったとは気付きませんでした。出来たら次作は長編、じっくりと待ちますので、じっくり焦らず騒がず書いて欲しいと思います!!
5. Posted by 雪芽    2007年11月18日 22:16
yoriさん、こんばんは。
恒川ワールドだなと感じながらも、今回はいまひとつ物足りなさが残ってしまいました。
充分楽しめた部分も多いのですが。
異界で見上げる空はどんな色でしょう。自分の心模様が映って見えたら怖いです。どんよりとか、汗
なんにしても期待してしまう作家さんですね。
6. Posted by yori    2007年11月19日 21:28
雪芽さん こんばんは
決して悪くはなかったんですけどね 笑
きっと期待が大きすぎたのでしょう。
次作は長編でビシッと決めて欲しいですね!!
7. Posted by 藍色    2007年11月27日 02:35
yoriさん、こんばんは。
囚われになった人たちの、
戸惑いと悲しみの言動に釘付けでした。
この感じ、…思いつきませんでしたけど、置き去り感がぴったりですね。

長編はもっとすごいのですか?。
期待して待ちます。
8. Posted by yori    2007年11月27日 19:28
藍色さん こんばんは
囚われる、というテーマの短編集だと、他の方のブログを見るまで気付きませんでした 苦笑
言われてみればその通り、こういう趣向は大好きです!!
9. Posted by たまねぎ    2007年12月13日 22:23
読みました。読んでなお一層長編が読みたいと思いました。
10. Posted by yori    2007年12月14日 22:21
たまねぎさん こんばんは
大長編ではなく、ちょっと長めの中編、という辺りが、恒川氏にはよく似合うような気がするのですが・・・
11. Posted by らぶほん    2007年12月15日 12:33
こんにちは。
前作ほどの衝撃はありませんでしたが、期待はまだ続いています。
自分独自の世界を持っている作家さんは強いな!と感じました。
作家さんにとって〇〇さんらしい!と言われることが褒め言葉なのかわかりませんが、私は悪いことではないような気がします。
次作ではどんな恒川さんの世界を見せてくれるのか、楽しみです。
12. Posted by yori    2007年12月15日 22:39
らぶほんさん こんばんは
そうですね、らしいと言うことは、ある意味でその作家の作風を、読者が認めているということだと思いますね。恒川さんには彼独自の作風があると、私も思います!!
13. Posted by    2007年12月22日 16:27
はじめまして。
恒川ワールドが相変わらず健在でほっとしました。でも怖がりの私としては、あまりおどろどろしすぎない作品をもっと読みたいな、とおもったりしてます。なんにせよ、次回作も楽しみですね!
14. Posted by yori    2007年12月22日 17:14
爽さん いらっしゃいませ!!
恒川ワールド、確かに怖いんですけどね、何処かファンタジックなので、怖さよりも幻想的な魅力が先に立ってしまうような気がします 笑
15. Posted by june    2008年03月14日 21:03
異界に囚われるというテーマとは!本当だ!三作ともそうですね。今気づきました^^;
異界に魅かれて囚われてしまう気持ちが何となくわかるだけに怖かった気がします。
恒川さんにはこれからも異界をのぞかせてほしい・・そう思います。
16. Posted by yori    2008年03月14日 22:38
juneさん こんばんは
異界に囚われるということは、やはりとても怖いことですね。そんな怖い世界を描くリスクを背負いながら、恒川さんには今後も頑張って欲しいと思います。
17. Posted by Roko    2008年03月16日 22:11
yoriさん☆こんばんは
恒川さんの作品で描かれる異界から、色んな事を考えてしまいました。
日付は変わっていても、毎日同じような生活をしている人や、世間から遊離して生きている人は、世の中には実にたくさんいます。
それは異界よりも怖いかもしれないと思えてきました。
18. Posted by yori    2008年03月19日 00:01
Rokoさん こんばんは
人は誰しも心の奥に、それぞれがそれぞれの異界を抱えているような気もしますね。
19. Posted by きりり    2008年09月25日 02:25
一作づつだと、やや弱しと言うところがありますね ちょっと悲しくて、優しくて、懐かしくて、どんな作品を書いても損なうものがないような不思議な作品を書かれると思います
20. Posted by yori    2008年09月25日 22:34
きりりさん こんばんは
哀しいのだけれど、懐かしい、そこがポイントかもしれませんね!! 今後の恒川ワールドからも目が離せません!!

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