2009年08月17日

鉛色の面影

私が清張を一番たくさん読んだのは、
中学から高校にかけての頃だろうか。
随分と色々な作品を読んだなような気がしていたが、
今振り返ってみると、清張の膨大な作品群の前には、
ごくごく僅かな作品の、それもほんの表層だけしか
眺めていなかったことがよく解る。

ある程度の年齢になって「点と線」や「砂の器」
その他短編集などを再読したことはあるのだが、
今だ未読の作品に真っ正面から立ち向かうことは
なかったように思う。

夏休みでもあるし、
愛読ブログ「どくしょ。るーむ。」との共同企画、
「夏の松本清張フェアー」に、果敢にも挑んでしまおうと思う 笑


手にした一冊は「昭和史発掘 1」
随分と長い間、書庫で積本になっていた文庫である。
タイトルから想像される通り、
ドキュメンタリーというか、
昭和史に対するルポルタージュというか、
とにかく重苦しくも鉛色の雨空のような作品である。

私は殆ど読んできていないのだが、
松本清張には小説に勝るとも劣らぬほどに、
歴史を扱った作品が多い。
その評価については司馬遼太郎先生と同様、
賛が圧倒的に多い、賛否両論である。

その評価から、私は清張の「昭和史発掘シリーズ」に対し、
若干の懸念を持っていた。
政治的思想的には、ある方向に、
司馬先生とは逆の方向に偏ったルポルタージュとして、
仕上がっているのではないか、と想像していたのである。

しかしその懸念は杞憂だった。
「昭和史発掘 1」の松本清張は
冷静沈着な新聞記者のようにニュートラルな視線と視点とを持って、
大正昭和の暗部に鋭いメスを入れていた。

文春文庫新装版で全9冊、出版されているようなので、
少しずつ、たとえ秋になっても冬になっても
この重苦しくも悲しい夏を、続けて読んでいきたいと思う。

ちなみに、(1)に収められている一編「石田検事の怪死」では
傑作「砂の器」の冒頭部分を彷彿とさせる記述がある。
フィクションとノンフィクションの絡みもまた、
このシリーズの楽しみの一つになるかもしれない。

昭和史発掘〈1〉 (文春文庫)
昭和史発掘〈1〉 (文春文庫)
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yori1199 at 22:58│Comments(2)TrackBack(1)この記事をクリップ!松本清張 

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1. 眼の壁  [ どくしょ。るーむ。 ]   2009年08月19日 22:17
著者:松本清張 出版社:新潮文庫 感想: 手形詐欺と言えば、高木彬光さんの「白昼の死角」も面白かったなと思いつつ。 この「眼の壁」は「点と線」に続くベストセラーとなり、のちの清張ブームのきっかけとなった作品だそうです。 物語は"パクリ屋"と呼ばれる手形詐....

この記事へのコメント

1. Posted by ia.   2009年08月19日 22:21
こんばんわ。
「昭和史発掘」は文庫で発売されているんですね。
私も集めることにします。
清張さんのノンフィクションは推理小説らしい切り口で面白いですよね。
2. Posted by yori   2009年08月20日 22:49
ia.さん こんばんは
清張のノンフィクションは小説のような雰囲気がありました。それでいてとてもリアル、フィクションとノンフィクションの境目が見えません。

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